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③WISC-Ⅴ検査の読み取りが、なぜ「PASS理論」からCHC理論へ移行していったのか
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⑬発達障がい児の学校での困りごとBEST 5とWISC-Ⅴ検査
⑲発達障害を抱える子どもの「平均寿命」が短い理由とその対策法
⑳発達障害があると「精神疾患」になる可能性が高い理由とその対策法
起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation, OD)は、自律神経系の機能異常により、立ち上がった際に血圧が適切に維持できず、様々な症状を引き起こす疾患です。
思春期の子どもや若者に多く見られますが、成人にも発症することがあります。
日常生活に支障をきたすほどの症状が現れることもあり、適切な理解と対応が重要です。
以下に、起立性調節障害について、その病態、症状、診断、治療、日常生活での注意点などを詳しく説明します。
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1. 起立性調節障害の病態とメカニズム
起立性調節障害は、自律神経系のうち、主に血圧や心拍数の調節に関わる部分の機能不全が原因と考えられています。
健康な人は、立ち上がると重力によって血液が下半身に移動しますが、自律神経系が速やかに反応し、血管を収縮させたり、心拍数を増加させたりすることで、脳への血流を維持します。
しかし、起立性調節障害を持つ人では、この調節機能がうまく働かず、立ち上がった際に脳への血流が一時的に低下し、様々な症状を引き起こします。
具体的なメカニズムとしては、以下の点が考えられています。
・ノルアドレナリンの分泌不全: 交感神経系の主要な神経伝達物質であるノルアドレナリンの分泌が不十分である可能性があります。ノルアドレナリンは血管収縮作用を持ち、立ち上がり時の血圧維持に重要な役割を果たします。
・β受容体の感受性低下: 血管壁にあるβ受容体の感受性が低下している可能性があります。β受容体はノルアドレナリンなどの刺激を受け取り、血管を収縮させる働きをしますが、感受性が低いと血管が十分に収縮せず、血圧が低下しやすくなります。
・体液量の減少: 慢性的な水分摂取不足や、体液分布の異常により、循環血液量が減少している場合があります。血液量が少ないと、立ち上がり時の血圧維持が難しくなります。
・静脈還流の低下: 下半身の筋肉の収縮が不十分であるなど、心臓への静脈還流が滞りやすい場合があります。これにより、心臓から送り出される血液量が減少し、血圧が低下しやすくなります。
これらの要因が単独で、あるいは複合的に関与することで、起立性調節障害の病態が形成されると考えられています。
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2. 起立性調節障害の症状
起立性調節障害の症状は多岐にわたり、個人差も大きいのが特徴です。
主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
2.1 起立時の症状
・立ちくらみ、めまい: 立ち上がった直後や、しばらく立っていると、ふらつきやめまいを感じることがあります。
・失神、眼前暗黒感: 重症の場合には、意識を失って倒れてしまったり、目の前が暗くなるような感覚を覚えたりすることがあります。
・動悸、息切れ: 立ち上がると心臓がドキドキしたり、息苦しくなったりすることがあります。
・倦怠感、疲労感: 全身のだるさや疲れやすさを慢性的に感じることがあります。特に午前中に強く、午後から夕方にかけて軽減する傾向があります。
・頭痛: 締め付けられるような頭痛や、ズキズキするような頭痛が起こることがあります。
・吐き気、腹痛: 立ち上がると気持ちが悪くなったり、お腹が痛くなったりすることがあります。
2.2 その他の症状
・起床困難: 朝なかなか起き上がることができず、起床後も体調が優れないことが多いです。
・睡眠障害: 寝つきが悪かったり、夜中に何度も目が覚めたりするなどの睡眠の問題を抱えることがあります。
・集中力低下、思考力低下: 物事に集中することが難しくなったり、考えがまとまらなくなったりすることがあります。
・食欲不振: 食欲がなく、体重が減少することがあります。
・首や肩の痛み: 首や肩のこり、痛みを感じることがあります。
・手足の冷え: 手足が冷たく感じることがあります。
・気分不良、イライラ: 気分が沈んだり、些細なことでイライラしたりすることがあります。
これらの症状は、朝や午前中に強く、午後から夕方にかけて軽減する傾向があることが一般的です。
また、気候の変化や体調によって症状の程度が変動することもあります。
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3. 起立性調節障害の診断
起立性調節障害の診断は、問診、身体診察、そして必要に応じて行われる起立試験(ヘッドアップティルト試験)などに基づいて総合的に行われます。
3.1 問診
医師が、患者の症状、発症時期、経過、既往歴、家族歴などを詳しく聞き取ります。
特に、立ち上がった際の症状の有無や程度、時間帯による症状の変化、日常生活への影響などを確認します。
3.2 身体診察
血圧、脈拍などを測定します。
臥位(寝た状態)と立位(立った状態)で血圧と脈拍を測定し、その変化を評価します。起立性調節障害の診断基準の一つとして、立ち上がり後の血圧低下や心拍数の異常な増加などが用いられます。
3.3 起立試験(ヘッドアップティルト試験)
より詳細な評価が必要な場合に行われることがあります。
専用の検査台に患者を寝かせた状態で血圧と心拍数を継続的に測定し、その後、段階的に体を起こしていき、血圧や心拍数の変化、自覚症状などを観察します。
これにより、自律神経系の反応を客観的に評価することができます。
3.4 その他の検査
必要に応じて、血液検査、心電図検査、脳波検査などが行われることもあります。
これらの検査は、起立性調節障害と類似した症状を引き起こす他の疾患を除外するために行われます。
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4. 起立性調節障害の分類
起立性調節障害は、症状や血圧・心拍数の変化のパターンによって、いくつかのタイプに分類されることがあります。代表的な分類としては、以下のものがあります。
・体位性頻脈症候群(POTS: Postural Orthostatic Tachycardia Syndrome): 立ち上がり時に、顕著な血圧低下は見られないものの、心拍数が大幅に増加する(通常、30〜40回/分以上の増加、または120回/分以上になる)タイプです。
・神経原性起立性低血圧: 立ち上がり時に、収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上低下するタイプです。
自律神経系の障害がより顕著な場合に多いとされています。
・血管迷走神経性失神(Vasovagal Syncope): 特定の状況(精神的なストレス、痛み、長時間立っているなど)で、急激な血圧低下と徐脈が起こり、失神に至るタイプです。
起立性調節障害と合併することもあります。
・遷延性起立性低血圧: 立ち上がり後、数分から数十分かけて徐々に血圧が低下していくタイプです。
これらの分類は、治療方針を決定する上で参考になることがあります。
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5. 起立性調節障害の治療
起立性調節障害の治療は、薬物療法と非薬物療法を組み合わせることが一般的です。
5.1 非薬物療法(生活習慣の改善)
起立性調節障害の治療の基本となるのは、日常生活における工夫です。
・水分摂取: 意識的に水分を多めに摂取する(1.5〜2リットル程度が目安)ことが重要です。
特に起床時や入浴前後、運動前後など、脱水になりやすいタイミングでの水分補給を心がけましょう。
・塩分摂取: 塩分を適度に摂取することで、血管内の水分量を増やし、血圧を維持しやすくします。
ただし、過剰な塩分摂取は他の健康問題を引き起こす可能性があるため、医師や管理栄養士の指導のもとで行うようにしましょう。
・弾性ストッキングの着用: 下半身に血液が溜まるのを防ぎ、静脈還流を促進するために、弾性ストッキングを着用することが有効な場合があります。
・段階的な起立: 急に立ち上がると症状が出やすいため、寝た状態からゆっくりと起き上がり、座ってから立ち上がるなど、段階的に体を起こすように心がけましょう。
・規則正しい生活: バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動など、規則正しい生活を送ることが自律神経系の安定につながります。
・適度な運動: 軽い運動や筋力トレーニングは、全身の血液循環を改善し、自律神経系の機能を調整するのに役立ちます。ただし、激しい運動は症状を悪化させる可能性があるため、体調に合わせて無理のない範囲で行いましょう。
・ストレス管理: ストレスは自律神経系のバランスを乱す要因となるため、自分に合ったリラックス方法を見つけ、ストレスを適切に管理することが重要です。
5.2 薬物療法
症状が重く、日常生活に支障をきたす場合には、薬物療法が行われることがあります。使用される薬剤は、症状やタイプによって異なります。
・昇圧剤: 血圧を上げる作用のある薬(例:ミドドリン、フルドロコルチゾン)が用いられることがあります。
・抗不整脈薬(β遮断薬など): 心拍数の過度な上昇を抑えるために用いられることがあります(主にPOTSに対して)。
・漢方薬: 体質や症状に合わせて、自律神経系のバランスを整える効果が期待できる漢方薬が用いられることがあります。
薬物療法は、医師の指示に従い、症状の改善に合わせて調整していく必要があります。
自己判断で薬を中止したり、量を変更したりしないようにしましょう。
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6. 日常生活での注意点と工夫
起立性調節障害を持つ人が日常生活を送る上で、症状を軽減し、快適に過ごすためには、いくつかの注意点と工夫が必要です。
◆起床時:
・目覚まし時計のアラームが鳴ったら、すぐに起き上がらず、布団の中で手足を動かしたり、軽いストレッチをしたりしてから、ゆっくりと起き上がりましょう。
・起き上がったら、すぐに立ち上がらず、しばらくベッドの端に腰掛けてから立ち上がるようにしましょう。
・起床直後に水分を補給することも大切です。
◆日中:
・長時間同じ体勢で立っているのを避け、適度に座ったり、足を動かしたりするようにしましょう。
・急な体位変換は避け、ゆっくりとした動作を心がけましょう。
・暑い場所や人混みなど、体調が悪くなりやすい場所はできるだけ避けましょう。
・疲れたと感じたら、無理せず休憩するようにしましょう。
◆入浴:
・熱いお風呂に長時間浸かるのは避け、ぬるめのお湯に短時間で入るようにしましょう。
・湯船から立ち上がる際は、ゆっくりと時間をかけて行いましょう。
・入浴前後には、必ず水分を補給しましょう。
◆食事:
・バランスの取れた食事を規則正しく摂ることが大切です。
・水分を多く含む食品や、適度な塩分を含む食品を意識的に摂るようにしましょう。
・アルコールの摂取は、血管を拡張させ、症状を悪化させる可能性があるため、控えましょう。
◆睡眠:
・規則正しい睡眠時間を確保し、質の高い睡眠をとるように心がけましょう。
・寝る前にカフェインを摂取するのは避けましょう。
◆その他:
・ストレスを溜め込まないように、自分なりのリラックス方法を見つけて実践しましょう。
・体調が優れないときは、無理せず休養することが大切です。
・学校や職場など、周囲の人に自分の症状を理解してもらい、必要な配慮を受けられるようにすることも重要です。
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7. 起立性調節障害の予後と付き合い方
起立性調節障害は、思春期に発症することが多いですが、成長とともに自然に改善していくことも少なくありません。
しかし、成人になっても症状が続く場合や、症状が重く日常生活に支障をきたす場合もあります。
大切なのは、この疾患が「怠け」や「気のせい」ではなく、自律神経系の機能異常によるものであるということを理解し、適切な治療と日常生活での工夫を続けることです。
焦らず、自分のペースで症状と向き合い、可能な範囲で社会生活を送ることが重要です。
周囲の理解とサポートも不可欠です。家族や友人、学校や職場の関係者など、身近な人に自分の症状を伝え、協力してもらうことで、精神的な負担を軽減し、より快適な生活を送ることができるでしょう。
起立性調節障害は、根気強く付き合っていく必要がある疾患ですが、適切な管理と周囲のサポートがあれば、症状をコントロールし、充実した生活を送ることは十分に可能です。
困ったときは一人で悩まず、医療機関を受診し、専門家の意見を聞きながら、自分に合った対処法を見つけていくことが大切です。
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