
皆さん、こんにちは。
発達心理サポートセンターの心理士/カウンセラーの車重徳です。
今回は、こんな質問を頂きました。
「うちの子は本が読めません。本が読めない原因というのは何でしょうか?
また、その対策があれば教えてください。」
というものです。
今回は、この質問にお応えいたします。
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まず、本が読めないとはどういう事が考えられるのでしょう。
こういった考え方を要素分解といいます。
例えば、子供が何かできないことがあった場合に、
そのできないことだけに注視するとなかなか解決しないケースがあります。
わかりやすい例を挙げると、人前で発表することが苦手な子がいるとします。
それであれば、人前で発表する経験をたくさん設ければ慣れて
得意になるのではないかという風に思っている方がいます。
しかし、それはとてもとても大きな間違いで、本人にとっても
苦痛でしかないんじゃないかなって思います。
そのため、人前で話す機会をたくさん作る前にまずやらなければいけないこと
っていうのがあります。
その時に、その子の能力的に何ができるのか、何が苦手な結果、
人前で話すことができなくなってしまっているのかっていうのを考えるんです。
こういった考え方を要素分解という風に呼びます。
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では、本が読めない子っていうのは何が原因なのかというのを要素分解していきましょう。
いくつか考えられます。
まずは、単語力はありますか?
ということです。ちなみにその子に単語力があるのかを確認するのには、
WISC4という検査があります。WISC4のVCI(言語理解指標)というところに当該年齢レベルの単語力があるのかどうかが分かるようになっています。
WISC4持っている方はその辺を見ていただけたら分かるかと思います。
単語力がなければ、文章を読んでも難しいから、当然理解できない。
理解できないからつまらないし、読まないというロジックになっていきます。
ちなみに文章を読めない子がいたとします。
例えば小学校5年生の子が長文読めなかった時に、その時すぐに学年のレベルを落とす方が
いるんです。
じゃあ、小学校4年生の教材読めるか確認しようかなと。
そういう風にやっていいパターンをまず挙げると、単語力がない場合のみです。
小5の文章で難しすぎたら小4に落としてください、小4読めないなら小3に落としていくっていことはできます。
それ以外は、それ以外の対策をしなければいけないです。
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次に何が関係するのかっていうと、指示代名詞とか暗喩、隠喩とかを
わかりますかっていう話になります。
例えば、これ、それ、あれが出てきたときに、それが何を指すのか。
例えば、物語や小説の中で彼が出てきたら、主人公なのか、その友達なのか、お父さんなのか、誰なのかっていう話なんです。
こういったのは文法に近い能力もあるんです。
WISC4っていう検査で言うと、VCI(言語理解指標)の類似という検査になります。
もしWISC4を取っていなかったとしても、指示代名詞の知識があれば読み解くことができます。
指示代名詞や暗喩、隠喩が分かるのかということが考えられます。
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次に文の構造が理解できていますか?
これは知能ではなく知識に当てはまります。
文の構造と次に出てくるのが文法です。
文の構造というのは短文なのか副文なのか、文法というのは形容詞は何がかかっているのか、
形容動詞とは何かといったものです。
これは知能ではなく知っているのか、知っていないのかという知識だけの問題です。
知っていないのに学年を落としたところで、長文の中に主語、述語は
絶対でてくるので関係ないのです。
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そして次に行間読めますか?
行間読めるかどうかはWISCの検査で言うと、PRI(知覚推理指標)になります。
行間とはどういうことかというと、文章と文章の間に作者が込めた意図が
隠れていることがあるんです。
特に論説文とか読んでいると、こう書いているけど、作者はこう思っているし、
この後こうなるだろうなっていうようなことが分かる時があると思います。
それって、テクニックなんです。
その知識を持っていますかということが関係してきます。
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そして次に出てくるのは、短期記憶ありますか?
なぜ短期記憶が長文に関係あるのか疑問に思う人がいると思いますが、大いに関係あります。
例えば、長文読解をどういう風に読むのかというと、前に書いてある内容を
脳の一部として記憶に保持して次々の段落に進んでいきます。
でも、前の段落に書いてある内容全部忘れてしまったらどうなるでしょうか。
推理小説でいうと、様々な伏線がいろいろあって、その伏線が複雑に絡まりあって
最後犯人に行き着く、犯人が捕まる。
あの伏線てこういう事だったのか、だから面白いなとなると思います。
でも、10話あるドラマのクライマックス、最終回だけを見てもつまらないですよね?といった話です。
なので、短期記憶がないと長文を読めないのはそういう事です。
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だから、実際本が読めないというのが何が原因なのかを確認してみましょう。
もし文法や文の構造であれば、知識として入れればいいです。
単語力であれば、学年を落とせばいいです。
指示代名詞だって教えればいいです。
ただ、行間を読むとか、短期記憶とかは実際自分ではどうにもできないです。
だから短期記憶を鍛えるトレーニングがあります。
それについてはまたどこかで詳しくお伝えします。
それより今、本を読むためにどうすればいいのかというと誰かがガイドを
引いてあげないといけません。
例えば、これはどういう文章で第一段落はどういう内容なのか、第二段落は
どういう内容なのかといった形や、この文の裏には行間、筆者はこう思っているよというのを入れこませたうえで読ませていくことが必要になります。
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繰り返しですが、本を読めない子は原因が何なのかを考えます。
単純に学年を落とせばいいという話ではないです。
単語力ありますか?
指示代名詞、隠喩、暗喩わかりますか?
文の構造を分かっていますか?
文法分かっていますか?
行間読めますか?
短期記憶ありますか?
こういったことを確認していきながら、何が原因なのか、対策は何なのか、
対策と合わせてやった方がいいのが苦手なところのトレーニングという形になります。
いかがでしょうか。
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発達心理サポートセンター
心理士/カウンセラー 車重徳
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