
皆さん、こんにちは。
発達心理サポートセンターの心理士/カウンセラーの車重徳です。
さて、こんな質問を頂きました。
「私は心理士です。WISC4検査を取っていますが、所見の書き方がわかりません。どうしたらよいのでしょうか。」
というものです。
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所見の書き方について教えてほしいという、皆さんからのご要望がとても多いです。
それで、発達心理サポートセンターの方で夜な夜な個別に対応させて頂いています。
「WISCの取り方研修」という研修があって、そこで所見の書き方についてご自身が取った数字をもとに「こう書くんですよ」というのをリアルタイムで目に見える形でご説明しています。
所見を書き終わった結果の中には「この数字、なんでこんな文章になるの?」と思うようなものもあると思いますが、それをその場で一行ずつ「この数字はこういう意味だからこういう文章にします」と、リアルタイムで目に見えるようにお見せしていきます。
多分、それをしているのは日本中に僕だけだと思うので、結構好評です。
「WISCの所見の書き方」などという本は売っていません。
それで、僕が書籍で書こうと思って、クラウドファンディングでお金が集まったら出そうかなと思って設定したのですが、僕の知名度がなさ過ぎてお金は集まりませんでした。
極論すると福祉とか教育の方ってなかなかITにあまり強くなかったりします。
WISCの所見の書き方については知っていても、クラファンまではわかっていません。
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それで、どうやって書くのかと言うと、まず、評価点合計(合成得点)に対して、どういう記述分類をするかと考えます。わかりやすい言葉で、指標得点を評価する。
「中の上」とか、「上の下」とかという表現は好きではありません。
例えば、言語理解指標であれば、「言葉を理解して意味通り使用する力は・・・」と書きます。
もしVCIが120を越えているのであれば、「言葉を理解して意味通り使用する力はとても優れているでしょう」などと書きます。
もし、70以下であれば、「言葉を認識して意味通り使用する力は少々弱いでしょう(苦手でしょう、難しいでしょう)」という書き方をします。
PRIが高いのであれば、例えば絵の概念とか行列推理が低いのであれば、「場の空気を読んだり、先の見通しを立てたりすること(力)は、とても優れているでしょう」ということを書く。
ちなみに100前後、90~109までは「当該年齢レベルでしょう」と書きます。
もしそれで70とかを下回っているのであれば、「場の空気を読んだり、先の見通しを立てたりすることは、大分(かなり)苦手でしょう」とか、そういう書き方をします。
アップダウンはありますが、評価点合計で6を下回るとだいたい70を下回ります。
ただし、これらの書き方は、主訴やその子が何か高いのか、何が低いのかによって若干変わります。
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その後、本題に入ります。
もし主訴があるのであれば、主訴に応じた書き方を書いてあげます。
例えば主訴で多い「お勉強が苦手、お勉強ができない、学校の授業について行けない」というお悩みであれば、まず見るのは、短期記憶と長期記憶のバランスです。
聴覚の短期記憶はWMI、視覚の短期記憶は実はPSIです。
だから、もし学校のお勉強に難点があるのであれば、例えば「聴覚の短期記憶の保持は、あまり得意ではないでしょう」、もしWMIが低いのであれば「一方、視覚の短期記憶の方が優れているでしょう」と書きます。
もしWMIよりPSIの方が高ければ、「何か情報(英単語、漢字、言葉など)を入れる際には、目から入れた方が初期記憶としては保持しやすいでしょう」といった書き方をします。
長期記憶については、VCI(言語理解指標)の「単語」と「知識」で見ます。
「知識」は補助検査です。だから、取らないケースがあります。本来は主訴に応じて補助検査何を取るかというのを変えるべきです。
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短期記憶は高いけれど長期記憶は低いという子は結構います。
例えば、「明日の漢字テストや英単語のテストは満点を取れる、でも、3か月経ったらまるっと全部忘れる子がいる」という話です。
本当の長期記憶はもっと3か月程度ではなく、1年2年でもなく、もっともっと長いものです。
ちなみにWISCは何歳何か月という単位で年齢を見るので、検査結果にリアルタイムでの学校のお勉強の内容が関係してくる部分が多少あります。
小学生であれば理科、社会までひっくるめて問題に出てきます。
理科、社会が出てくるのは、小学校で3年生以降なので、検査時に問われることは2、3年の長期記憶という形になる。
本当の長期記憶の考え方というのは、もっともっと広範囲になるし、そもそも長期記憶とは何年以上保持する記憶です、という医学的な定義はありません。
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少し話がそれましたが、長期記憶は「単語」と「知識」のバランスを見ます。
短期記憶が低いけれど長期記憶が高いという子もいます。
「明日の単語テストや漢字テストで、覚えるのに人より時間は要する」
そうであれば、最初に覚えるのは時間がかかるけど、しっかり情報を入れられれば、復習はいらなくなります。
一方、前者(短期記憶は高いけど、長期記憶は低い子)は、短期記憶が高いから、人より早く覚えたように感じてしまう。しかし、誰よりも早く忘れてしまいます。
それでも人は一度覚えたらずっと覚えていられると思ってしまいます。
長期記憶がどれぐらい保持できるかということは、わからないです。
情報の内容、入れ方によって違うので。
詳しくは伸ばし方講座、VCIの伸ばし方、PRIの伸ばし方、WMIの伸ばし方などで説明します。
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結論としては、まずは、指標得点の合成得点をどのように分類するかということです。
そして、その合成得点を構成している下位検査に対して、主訴に応じた形で何が考えられるのかというのを書いていきます。
その時に、指標得点をまたぐと少し分かりづらいので、VCIは類似、単語、理解だけ、PRIは積み木模様、絵の概念、行列推理だけ、WMIは数唱、語音整列だけ、PSIは符号、記号探し
だけ、という形で書く。当然補助検査が入ってもいいです。
そして、総評のところで、VCIとPSIをまとめてとか、さっきお話した短期記憶と長期記憶であれば、WMI、PSI、VCIも全部絡めたものの話になります。
僕がプラスで書くのは、「そして、どうすればいいのか」または、もし低いのであれば、「どうすればいいのか」といった対応策も、書けるのであれば書いてあげます。
対応策は口頭で言ってもいいと思います。そこは状況によって変わると思います。
このようなことを、検査を取った方が持っている数値をもとに、その場で読み解いていってあげるというのが、読み取り講座で言っている所見の書き方です。
このようにすると、「なんのこっちゃ?」とか「これ何が言いたいんだろう?」とか「実際のその子と違うんだけど」とかいうような所見ではなくなります。
僕が受け取った所見は、本当に何が書いてあるかわからない所見も多くて、「この子は中の上です」「合理的な配慮が必要です」「ディスクレパンシーはこうで、有意差はこうです」「標準出現率はこうです」・・・そのような所見を結構見たことがあります。
そもそも有意差って何ですか?という話です。
僕は説明できますが、誤差ではなくちゃんと意味のある差ですよ、偶然ではないよ、ということですけど、そのようなことを書いても仕方がありません。
親が知りたいのは、「今の問題行動に対して、何が原因なのか?」「何に困難を抱えていて、何が原因で今起こっているのか」そして「どうすればいいのか」ということだと、僕は思います。
それについてある程度書いてあげないと、せっかく検査を取ったのに何もわからなかったということになるのではないかなと思います。
いかがでしょうか。
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発達心理サポートセンター
心理士/カウンセラー 車重徳