
皆さん、こんにちは。
発達心理サポートセンターの心理士/カウンセラーの車重徳です。
さて、こんな質問を頂きました。
「「こだわり」と「わがまま」はどう違うのでしょうか?」
というものです。
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まず、ASD(自閉症スペクトラム)の子どもはこだわりが強いし、ダウン症のお子さんもやはりこだわりが強いです。
また、幼児期にあるイヤイヤ期に近いわがままも結構あると思います。
まず、こだわりというのは一貫性があります。
ちゃんと一本筋が通っています。
例えば、過去にあったことですが、どうしても白線の上を通らないと家まで帰れないというとても強いこだわりを持った子どもがいました。
道が工事中であろうが、雨が降っていようが、遠回りだろうが、絶対白線の上しか通らないというほどのこだわりです。
これに対して、わがままというのは一貫性がありません。
今日はダメ、でも明日はOKという風にその日の気分やその時の状況などにに左右されるのがわがままです。
「こだわり」と「わがまま」というのは、こういった違いがあります。
だから、「こだわり」は気分ではなく一貫性があるので、それ全体というか根本を解決しないとなりません。
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どうしても歯を磨かないという子どもがいました。歯を磨かないと、歯が全部虫歯になって、終いには歯がなくなってしまうのに、「歯医者はイヤです。」でも、「歯が痛いのはイヤです。」と、対応に困ってしまいます。
そもそもこだわりは、元々あったこだわりを、他の別のこだわりで覆って、歪曲・矮小化させる、もともとあったこだわりを小さくさせるというやり方があります。
また、人は幸せになりたい、という想いが強いと思います。
誰しもいいことがあってほしいという気持ちが強い。
例えば、先ほどの「白線を通らないと家に帰れない」という子の場合、そのいいことというのを、例えば「公園の前を通るといいことがあるよ。」という暗示を強烈に入れてしまいます。
そうすると「白線を通って」よりも、「公園の前を通らないと不幸になる」というような印象を与えることが出来ます。
誰だって不幸にはなりたくありません。
だから、「不幸にはなりたくないから、公園の前を通る」という風になります。白線の上をただ通りたいというこだわりだけで、理由付けがあいまいな場合もあります。
その場合、他の強大なこだわりみたいなものをその上から与えつけて、覆い被してしまうということができます。
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過去どうしても靴下がはけないという子がいました。
でも、非常に足が臭い。その子が歩くと、クッションフロアの上のふわふわなマットに、その子の足跡がわかるような形で臭いが着くというくらい強烈でした。
とても困ってどうしたのかというと、縫ってあるレッグウォーマーを履かせました。
それをどんどんずらしていき、「これはレッグウォーマーだ」とひたすらその子に入れ込んでいきました。その子がはいているのは確かに靴下ではなく、先の縫ってあるレッグウォーマーです。あくまでもそれはレッグウォーマーで靴下ではない。
もとあるこだわりを、違うこだわりで覆って小さくする。
その結果、こちらが取らせたいと思う行動を取らせることができる、ということを行った経験があります。
わがままはその日の気分によって変わるので、OKの状況はどういう状況なのか、またはどういう気分だったらOKなのか、ということをしっかり分析する。
または、気持ちをいい方向や悪い方向に持って行ったり、プラスイメージやマイナスイメージにもっていくというのは難しかったりするので、ならば気持ちをフラットにしてしまったり、気持ちを他に向けてしまう。
「やるべきこと」に気持ちが向いてしまうから、いやになってしまうので、気持ちを別に持って行ったり、楽しい何かと混ぜてしまう。
「どうしてもお風呂が嫌い。」だったら、お風呂は嫌いかもしれないけれど、お風呂の中で遊べる面白いおもちゃを買ってみると、入って遊びたい気持ちになる。お風呂の中にポスターを貼ったら、それを見たくなる。
このような感じで、別のものに意識を持って行ったケースもあります。
なので、結論を言うと、こだわりというのは一本筋が通っていて、何があろうがゆるがない。わがままというのはその日の気分によってやったりやらなかったり変わるけれど、こだわりは「やらない」です。
いかがでしょうか。
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発達心理サポートセンター
心理士/カウンセラー 車重徳