WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査の専門家として、WISC-V(ウェクスラー式児童用知能検査
第5版)が「知能検査」とも「心理検査」とも呼ばれる理由と、その本質的な位置づけについて詳しく解説します。
結論から申し上げると、WISC-V検査は「知能検査であると同時に、心理検査の一種でもある」というのが、最も正確な理解です。この二つの呼び方は、WISC-V検査の「測定対象」と「臨床的な活用範囲」という、異なる側面に焦点を当てているためであり、どちらも本質的には間違いではありません。
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1.
WISC-Vが「知能検査」と呼ばれる理由:測定対象の焦点
WISC-V検査を「知能検査(Intelligence Test)」と呼ぶのは、検査が「知的な能力(Cognitive Ability)」を主たる測定対象としているからです。
1-1.
知的構成要素の測定と数値化
「知能検査」という名称は、以下の理由から、WISC-V検査の最も直接的で伝統的な役割を指し示しています。
知能指数の算出:
WISC-V検査の主要な成果は、全検査IQ(FSIQ)や主要指標(VCI、VSI、FRI、WMI、PSI)といった、標準化された知能指数(得点)を算出することです。これらの数値は、お子さんの知的能力が、同年齢の集団の中でどの位置にあるのかを客観的に示します。
認知能力の構成要素の評価:
検査は、言語理解、視空間認知、流動性推理、ワーキングメモリ、処理速度という、知能を構成する「特定の認知機能」を独立した尺度として評価します。これは、知能を単一の能力と見なすのではなく、複数の要素からなる複雑な構造として捉える現代の知能理論(CHC理論など)に基づいています。
知的障害の診断基準:
知能検査の結果は、アメリカ精神医学会(DSM-5)や世界保健機関(ICD-11)による知的発達症(知的障害)の診断基準(知的能力が平均から約2標準偏差未満)を満たすか否かを判断するための、不可欠な客観的データとなります。
要約すると、「知能検査」とは、WISC-V検査が「何を測定するために作られたか」という直接的な測定対象を示す、最も狭く、技術的な用語です。
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2. WISC-Vが「心理検査」と呼ばれる理由:臨床的活用範囲の広さ
WISC-V検査を「心理検査(Psychological
Test)」と呼ぶのは、その結果が、知的能力だけでなく、子どもの心理状態、行動、パーソナリティ、発達特性といった広範な心理的な側面の理解に活用されるからです。
「心理検査」という用語は、「精神科医・心理師が、個人の精神状態や心理的な特性を評価するために用いる、あらゆる標準化されたツール」という、非常に広範なカテゴリーを指します。
2-1. 心理検査という広範なカテゴリー
心理検査には、知能検査以外にも、以下のような多様なツールが含まれます。
WISC-V検査は、この「心理検査」という大きな雨傘の下にある、「知能検査」という専門分野のツールなのです。したがって、WISC-V検査を「心理検査」と呼ぶことは、その専門的な実施と解釈が、心理学の知識と臨床技術に基づいて行われることを強調しています。
2-2. 心理的な側面に関する情報の読み取り
WISC-V検査の実施と解釈は、単なるIQの算出に留まらず、子どもの「心の状態」に関する貴重な情報を提供します。これは、WISC-Vが**心理検査**として機能する最も重要な側面です。
① 遂行機能と実行力の評価
ワーキングメモリ(WMI)や処理速度(PSI)といった指標の低得点は、単に能力が低いだけでなく、注意の持続の困難さ、衝動性、課題への取り組み方の問題といった、ADHDなどの行動上の課題と関連している心理的な側面を示唆します。
② 感情・動機づけと不安の影響
検査中の子どもの態度、努力水準、失敗への反応、検査者との関わりといった観察事項は、結果を解釈する上で極めて重要です。
不安の影響:
極端な不安や完璧主義は、特に時間制限のあるPSIやWMIの得点を不必要に低下させることがあります。
動機づけの欠如:
課題への興味の低さや努力不足は、本来の潜在能力よりも低い結果(特に難しい下位検査)につながることがあります。
抑うつの影響:
抑うつ状態にある子どもは、精神的なエネルギーの低下により、集中力を要する検査で極端な低得点を示すことがあります。
これらの観察は、数値化されない子どもの心理状態を把握するために不可欠であり、心理検査としての側面を強く持ちます。
③ 認知プロファイルの「意味」の探求
VCIは高いのにWMIやPSIが低いというような認知機能の大きな「ばらつき(ディスクレパンシー)」は、子どもが日常生活で経験している「生きづらさ」や「見えない困難さ」の心理的な根拠となります。
心理師は、このプロファイルを読み解き、その子どもがどのようなストレスに晒されているのか、どのような学習環境が適しているのかといった、心理的・教育的な介入計画を立案します。
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3. 「どちらが正しいか」:臨床的な視点からの結論
前述の通り、WISC-V検査に対して「どちらが正しいか」という問いを立てるならば、**「知能検査であると同時に、心理検査の一種である」**という理解が最も正確です。
3-1. 専門家間の使い分け
知能検査:
心理学や精神医学の学術的な文脈や、診断基準を論じる際に用いられる、より技術的・限定的な用語です。「知的障害の診断のために、知能検査を実施しました」というように、測定対象を明確にしたい場合に適しています。
心理検査:
臨床的な現場全般(精神科、心療内科、児童相談所、学校のカウンセリングなど)で用いられる、より包括的な用語です。「子どもの全体像を把握するため、WISC-V検査を含む心理検査バッテリーを組みました」というように、その活用目的の広さを示す場合に適しています。
3-2. WISC-Vの本質的な価値
WISC-V検査の真の価値は、単にIQを測定する「知能検査」の枠を超え、子どもの認知特性を通じて、その子どもの行動、感情、学習の困難さの背景にある心理的な構造を理解する「心理検査」としての役割にあると言えます。
ベテランの臨床家は、WISC-V検査の得点プロファイルを、行動観察、保護者からの情報、他の性格検査や適応行動尺度(Vineland-IIなど)の結果と統合し、包括的な「心理アセスメント」として解釈します。
このプロセスにおいて、WISC-V検査は、子どもの「取り扱い説明書」を作成するための、中心的な情報源として機能します。
したがって、WISC-V検査は、「知能」という中核的な要素を評価することで、「子どもの全体的な心理的適応と発達」に関する情報を提供する、非常に重要な心理検査の一つであると結論づけられます。
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