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③WISC-Ⅴ検査の読み取りが、なぜ「PASS理論」からCHC理論へ移行していったのか
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⑬発達障がい児の学校での困りごとBEST 5とWISC-Ⅴ検査
⑲発達障害を抱える子どもの「平均寿命」が短い理由とその対策法
⑳発達障害があると「精神疾患」になる可能性が高い理由とその対策法
依存症とは、特定の物質や行動に対して強迫的な欲求を感じ、それを使用・実行することをコントロールできなくなる状態です。
一時的な快楽や苦痛の軽減を得るために、長期的な健康や社会生活に深刻な悪影響を及ぼすにも関わらず、その物質や行動を続けてしまう慢性的な脳疾患として理解されています。
依存症は大きく「物質依存」と「行動依存(プロセス依存)」の二つのカテゴリーに分類されます。
両者ともに脳の報酬系回路の機能異常が関与しており、類似した神経生物学的メカニズムを共有しています。
アルコール依存症は最も一般的な依存症の一つで、世界保健機関(WHO)によると全世界で約2億4000万人が罹患しているとされています。
アルコールは中枢神経系に抑制的に作用し、GABA受容体を活性化してドーパミンの放出を促進します。
アルコール依存症の特徴として、耐性の形成(同じ効果を得るために必要な飲酒量の増加)、離脱症状(手の震え、発汗、不安、幻覚など)、飲酒のコントロール喪失、社会的・職業的機能の著しい低下などがあります。
覚醒剤(メタンフェタミン、アンフェタミンなど)は、ドーパミン再取り込み阻害により報酬系を強く刺激します。
強い多幸感と覚醒作用をもたらしますが、同時に強い依存性を示し、長期使用により脳の構造的・機能的変化を引き起こします。
コカインは強力なドーパミン再取り込み阻害作用を持ち、瞬間的な強い快感をもたらします。
特にクラック・コカインは吸煙により急速に脳に到達するため、極めて強い依存性を示します。
ヘロイン、モルヒネ、オキシコドンなどのオピオイド系薬物は、脳内のオピオイド受容体に結合し、強い鎮痛作用と多幸感をもたらします。
医療用麻薬の不適切使用から始まる場合も多く、近年世界的に深刻な社会問題となっています。
大麻の主要成分であるTHCは、脳内のカンナビノイド受容体に作用し、リラックス感や知覚の変化をもたらします。
従来は依存性が低いとされていましたが、近年の高濃度THC製品の普及により、依存症例が増加しています。
タバコに含まれるニコチンは、ニコチン性アセチルコリン受容体に結合してドーパミンの放出を促進します。
ニコチンの血中半減期は約2時間と短いため、頻繁な摂取が必要となり、依存が形成されやすくなります。
離脱症状として、イライラ、集中困難、不安、抑うつなどが現れます。
医師から処方された薬物への依存も増加しています。
特に、ベンゾジアゼピン系薬物(抗不安薬・睡眠薬)、オピオイド系鎮痛薬、刺激薬(ADHD治療薬)などが問題となっています。
治療目的で開始されても、耐性形成により使用量が増加し、依存に至るケースがあります。
ギャンブル依存症は、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)で初めて行動依存として正式に認定された疾患です。
パチンコ・パチスロ、競馬、カジノゲームなどのギャンブル行為に対する制御不能な衝動が特徴です。
勝利時の快感がドーパミンの大量放出を引き起こし、負けを取り戻そうとする心理(チェイシング)により問題が深刻化します。
金銭的破綻、家族関係の悪化、職業的機能の低下などの深刻な結果をもたらします。
デジタル技術の普及に伴い急速に増加している依存症です。
オンラインゲーム、ソーシャルネットワーキングサイト、動画視聴サイトなどへの過度な没入が特徴です。
特にオンラインゲームは、レベルアップシステム、ランキング、ソーシャル要素などが組み込まれており、継続的な使用を促進する設計となっています。
WHO(世界保健機関)は2019年に「ゲーム障害」を疾病として正式に認定しました。
必要のない商品を衝動的に購入し続ける行動依存です。購入行為自体が快感をもたらし、一時的にストレスや不安を軽減する効果があります。
しかし、購入後に罪悪感や後悔を感じ、それを軽減するために再び買い物を行うという悪循環に陥ります。
クレジットカードの普及やオンラインショッピングの発達により、より容易に買い物行為を行えるようになったことが問題を深刻化させています。
性的行為や性的思考に対する制御不能な衝動が特徴です。
ポルノグラフィの視聴、風俗店の利用、不特定多数との性的関係、性的ファンタジーへの過度な没頭などの形で現れます。
インターネットの普及により、容易にポルノグラフィにアクセスできるようになったことが、この問題の増加に寄与していると考えられています。
特定の食品(特に高カロリー、高糖質、高脂質の食品)に対する制御不能な欲求が特徴です。
過食症や肥満の背景に食べ物依存が関与している場合があります。
砂糖や脂肪を多く含む食品は、脳の報酬系を刺激してドーパミンを放出し、薬物と類似した神経化学的反応を引き起こすことが研究で明らかになっています。
運動に対する強迫的な衝動が特徴で、身体的な問題や社会的責任を無視してまで運動を続ける状態です。
運動時に放出されるエンドルフィンやドーパミンが快感をもたらし、運動をやめると不安や抑うつを感じるようになります。
仕事に対する制御不能な衝動で、健康や人間関係を犠牲にしてまで働き続ける状態です。
達成感や成功体験がドーパミンの放出を促進し、より多くの仕事を求めるようになります。
依存症の発症には遺伝的要因が大きく関与しています。
家族歴のある人は、そうでない人と比較して依存症発症リスクが3-4倍高いとされています。
特定の遺伝子多型(例:アルコール代謝酵素、ドーパミン受容体、セロトニントランスポーターなど)が依存症の脆弱性に関与していることが研究で明らかになっています。
依存症の中核的なメカニズムは、脳の報酬系(特に腹側被蓋野から側坐核へのドーパミン経路)の機能異常です。
依存対象は正常な報酬刺激よりもはるかに大量のドーパミンを放出させ、この異常な刺激により脳の報酬系が「ハイジャック」された状態となります。
長期間の使用により、自然な報酬(食事、性行為、社会的交流など)に対する感受性が低下し、依存対象なしでは快感を感じられなくなります。
また、前頭前野の機能低下により、判断力や衝動制御能力が損なわれます。
依存症は脳の構造と機能を物理的に変化させます。
シナプスの強度、樹状突起の形態、神経細胞の新生などに影響を与え、これらの変化は依存行動を維持し、再発リスクを高めます。
依存症の発症と維持には、古典的条件づけとオペラント条件づけが関与しています。
依存対象の使用により快感が得られる経験(正の強化)や、不快感が軽減される経験(負の強化)により、使用行動が強化されます。
また、使用環境や関連刺激が条件刺激となり、それらに遭遇することで強い渇望(クレービング)が誘発されるようになります。
依存症者は特徴的な認知的歪曲を示します。
例えば、使用の利益を過大評価し、害を過小評価する、使用をコントロールできるという錯覚を持つ、失敗を外的要因に帰属するなどです。
これらの認知的バイアスは依存行動を正当化し、維持する役割を果たします。
衝動性、新奇性追求、報酬感受性、ストレス反応性などのパーソナリティ特性が依存症のリスクファクターとなります。
また、境界性パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害などの人格障害も依存症の併発率が高いことが知られています。
貧困、失業、低い教育水準、社会的不平等などは依存症のリスクファクターです。
経済的ストレスや将来への絶望感が、一時的な逃避手段として依存対象の使用を促進します。
特定の物質や行動に対する社会の許容度や規範が依存症の発症に影響します。
例えば、アルコールに寛容な文化ではアルコール依存症の率が高く、ギャンブルが合法化された地域ではギャンブル依存症が増加する傾向があります。
依存対象への物理的・経済的アクセスの容易さも重要な要因です。
インターネットの普及によりオンラインギャンブルやポルノグラフィへのアクセスが容易になったことが、関連する依存症の増加に寄与しています。
青年期は脳の発達過程にあり、特に前頭前野の成熟が成人期まで続きます。
この時期は報酬系の活動が高い一方で、判断力や衝動制御を司る前頭前野の機能が未熟なため、依存症のリスクが高くなります。
物質使用の開始年齢が若いほど、依存症発症のリスクが高くなることが知られています。
14歳以前にアルコールを使用開始した場合、成人後の依存症発症率は約40%と報告されています。
幼少期の身体的・性的虐待、ネグレクト、家庭内暴力などの逆境体験(ACE: Adverse Childhood Experiences)は、依存症の強力なリスクファクターです。
ACEスコアが高いほど、成人後の依存症発症率が指数関数的に増加することが大規模研究で明らかになっています。
うつ病、不安障害、PTSD、注意欠如・多動性障害などの精神疾患は依存症と高い併発率を示します。
これらの症状を軽減するための自己治療(セルフメディケーション)として依存対象が使用される場合が多く、二重診断として治療の複雑化を招きます。
依存症の発症は単一の原因によるものではなく、生物学的脆弱性、心理学的要因、社会環境的要因が複雑に相互作用した結果として生じます。
これは「多要因モデル」または「生物心理社会モデル」として理解されています。
個人の遺伝的素因や脳の特性(生物学的要因)、学習経験や認知パターン(心理学的要因)、社会経済状況や文化的背景(社会的要因)が組み合わさることで、依存症の発症リスクが決定されます。
また、これらの要因は依存症の経過中も相互に影響し合い、症状の悪化や回復に影響を与え続けます。
依存症は多様な形態を持つ複雑な疾患群であり、その原因も多面的です。
物質依存と行動依存は表面的には異なって見えますが、根底にある神経生物学的メカニズムには多くの共通点があります。
現代社会では、テクノロジーの進歩や社会構造の変化により、新たな形の依存症が次々と出現しています。
これらの問題に効果的に対処するためには、依存症の多要因的な性質を理解し、生物学的、心理学的、社会的な側面を統合したアプローチが必要です。
予防においては、特に青年期の教育と早期介入が重要であり、治療においては個々の患者の特性と背景を考慮した個別化されたアプローチが求められます。
依存症は治療可能な疾患であり、適切な支援により回復が可能であるという認識を社会全体で共有することが、この問題の解決に向けた第一歩となります。