455【KABC-Ⅱ】なぜ、KABC-Ⅱは現場ではあまり活用されないのか

 

KABC-Ⅱは、子どもの知的能力を「どれくらい高いか」という一点で測る検査ではなく、子どもがどのような認知過程を使って学んでいるのかを理解するための検査です。

 

知能を結果ではなくプロセスとして捉え、学習や指導につなげることを強く意識して設計されている点が、この検査の最大の特徴です。

 

 

 

 

KABC-Ⅱは、認知心理学に基づく理論を背景にしており、主に「同時処理」「継次処理」「学習能力」「計画能力」といった認知の働きを評価します。

 

さらに特徴的なのは、言語能力の影響をできるだけ切り離して認知力を評価できる構造を持っていることです。

 

言葉でのやり取りが苦手な子どもや、日本語理解に課題のある子ども、ASDや学習障害のある子どもに対しても、「分からない=知的に低い」と誤解されにくい評価が可能になります。

 

 

 

 

臨床的に見ると、KABC-Ⅱは「この子は覚えるのが苦手」ではなく、「一度にまとめて理解するのが得意なのか」「順序立てて処理する方が得意なのか」「試行錯誤しながら学ぶ力がどの程度あるのか」といった、学び方の質の違いを非常に明確に示してくれます。

 

そのため、本来は教育的支援や学習指導、合理的配慮を考える場面で極めて有用な検査です。

 

 

 

 

それにもかかわらず、日本の現場でKABC-Ⅱがあまり活用されていない理由は、検査の価値が低いからではありません。

 

最大の理由は、日本の制度や実務が「数値中心」「IQ中心」で長く運用されてきたことにあります。

 

WISCや田中ビネーのように、全検査IQや知能指数という分かりやすい指標は、診断書や行政文書、教育的判断にそのまま使いやすく、説明もしやすいという利点があります。

 

一方、KABC-Ⅱが示すのは「認知処理のプロフィール」であり、単純な優劣では語れません。

 

この説明に手間がかかる結果が、忙しい現場では扱いにくいと感じられてしまうのです。

 

 

 

 

また、KABC-Ⅱは結果の解釈と活用に高度な専門性を要する検査でもあります。

 

どの認知過程が学習につまずいているのか、それをどう指導に結びつけるのかを理解していなければ、せっかくのデータも活かされません。

 

日本では、心理検査が「評価で終わる」文化が根強く、「評価結果を授業や支援に落とし込む」訓練を十分に受けた人材が限られているという現実があります。

 

その結果、使いこなせない検査は次第に現場から遠ざかっていきます。

 

 

 

 

さらに、検査時間や実施負担の問題もあります。

 

KABC-Ⅱは検査構造が複雑で、子どもの状態に合わせた柔軟な実施と判断が求められます。

 

時間的・人的余裕が少ない医療や教育現場では、より慣れた検査、制度的に位置づけが明確な検査が優先されやすくなります。

 

 

 

 

臨床家の立場から見ると、KABC-Ⅱが活用されにくい現状は非常にもったいないと感じます。

 

特に、IQが平均域なのに学習がうまくいかない子ども、言語に頼らない強みを持つ子ども、学び方に大きな個性がある子どもに対して、KABC-Ⅱは非常に多くのヒントを与えてくれます。

 

しかし、その価値は「測っただけ」では伝わらず、理解し、翻訳し、支援に変換する人がいて初めて生きる検査です。

 

 

 

 

まとめると、KABC-Ⅱは「子どもの能力を序列化する検査」ではなく、「子どもの学び方を解読する検査」です。

 

現場であまり使われない理由は、検査が劣っているからではなく、日本の支援システムがまだ「プロセスを見る評価」を十分に受け止めきれていないからだと言えるでしょう。

 

今後、学習支援や合理的配慮が本格的に求められる時代になれば、KABC-Ⅱの価値は必ず再評価されていく検査だと考えています。

 

 

 

 

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発達障害ラボ

車 重徳

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