WPPSI-Ⅲ(ウィプシー・サード)は、世界的に最も信頼性の高いウェクスラー式知能検査の幼児版であり、主に2歳6ヶ月から7歳3ヶ月までのお子様を対象とした、認知発達の特性を詳細に把握するための心理検査です。
臨床現場において私たちがこの検査を用いる最大の目的は、単に「知能指数(IQ)」という数値を算出することではありません。
お子様が世界をどのように捉え、どのようなプロセスで情報を処理し、どこに得意不得意の「凹凸」があるのかという、いわばその子独自の「学びの地図」を可視化することに真髄があります。
検査の構造は、大きく分けて「言語理解」「知覚推理」「処理速度」という指標で構成されています。
まず言語理解では、言葉の意味の理解や語彙力、そして言葉を通じた概念形成の力を測ります。
これにより、周囲とのコミュニケーションや教示の受け取りやすさを推察できます。
次に知覚推理は、視覚的な情報を整理し、空間的なまとまりを捉えたり、法則性を見出したりする力を評価します。
言葉に頼らずに問題を解決する力を見るため、非言語的な思考の柔軟性が分かります。
さらに、年長のお子様向けには、目で見た情報を素早く正確に処理する力である処理速度も測定対象となります。
この検査の最大の特徴は、対象年齢によって実施する内容が調整されている点にあります。
まだ発達が著しい幼児期に行うものだからこそ、集中力が途切れないよう工夫された具材や、遊びに近い感覚で取り組める課題が用意されています。
精神科医や心理士の視点から見て非常に重要なのは、検査中の行動観察です。
正解か不正解かという結果だけでなく、分からない時にどのように振る舞うのか、飽きてきた時にどう立て直すのか、あるいは自信を持って取り組めるのはどのような課題なのか、といった非検査時の反応にこそ、その子の生活上の困り感や支援のヒントが隠されています。
検査結果として示される全検査IQ(FSIQ)はあくまで総合的な指標であり、私たちは各指標間の差異に注目します。
例えば「理解しているのに表現が追いつかない」のか、「視覚的なヒントがあればスムーズに動ける」のかといった特性を読み解くことで、ご家庭や幼稚園・保育園での具体的な関わり方、ひいては小学校入学に向けた環境調整のアドバイスが可能になります。
WPPSI-Ⅲは、お子様の「できないこと」を探すためのものではなく、その子が本来持っている力を最大限に活かし、健やかな育ちを支えるための強力なサポーターとなるツールなのです。
この検査結果の読み解き方や、具体的にお子様のどのような行動が気になっているかなど、さらに深掘りしてお話ししましょうか。
気になる方は是非、ご連絡くださいね。
発達障害ラボ
車 重徳