WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査における「有意差」とは、単なる得点の違いではなく、統計学的にみて偶然のばらつきでは説明しにくい差を指します。
知能検査の得点には必ず測定誤差が含まれます。
同じ子どもが別の日に受けても、多少の点数の揺れは生じます。
そのため、例えば指標間に5点の差があったとしても、それが本当に能力の差を示しているのか、誤差の範囲なのかは区別しなければなりません。
そこで用いられるのが統計的検定であり、一定の基準を超える差を「有意」と判断します。
WISC-Ⅴでは、各指標得点や下位検査得点の差について、標準化データに基づく臨界値が示されています。
その臨界値を上回る場合に「有意差がある」と解釈されます。
これは「意味のある差」という日常語的な意味とは少し異なり、「偶然に生じる可能性が低い差」という統計学上の概念です。
したがって、有意差があるからといって直ちに問題があると決めつけるものではありませんし、有意差がないからといって全く差がないという意味でもありません。
さらに重要なのは、有意差の解釈には出現率の視点も必要だという点です。
ある差が統計的に有意であっても、同年代の子ども全体の中で比較的よく見られる差であれば、特異性は低いと考えられます。
逆に、出現率が低い差であれば、その子の認知特性として注目すべき可能性が高まります。
つまり、有意差の有無だけでなく、その差がどの程度珍しいのかを併せて検討することが大切です。
また、有意差は診断を決めるための決定打ではありません。
あくまで認知のプロフィールを理解するための手がかりです。
例えば、言語理解と処理速度の間に有意差がある場合、思考力は十分でも作業のスピードに負担があるかもしれません。
しかしその解釈は、日常の学習場面や行動観察と照らし合わせて初めて意味を持ちます。
WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査における有意差とは、統計的基準に基づいて判断される信頼できる差を指しますが、それはゴールではなく出発点です。
数字を絶対視するのではなく、子どもの実際の姿と統合して理解する姿勢こそが、検査を生かすために最も重要なのです。
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発達障害ラボ
車 重徳