「ちょっとでも嫌なことがあるとすぐに学校に行きたくないと言う子どもに、学校に行かないという選択肢を与えてよいのか」という問いは、多くの保護者や教育者が抱える葛藤です。
この問題を考えるときに大切なのは、「行かせるか、行かせないか」という二者択一で捉えないことです。
子どもがすぐに行きたくないと言う背景には、単なるわがままではなく、不安の強さ、ストレス耐性の低さ、発達特性、成功体験の乏しさなど、さまざまな要因が隠れていることがあります。
まず重要なのは、その言葉を頭ごなしに否定しないことです。
どんな理由であれ、「嫌だ」と感じている心は事実です。気持ちを受け止めずに登校だけを強く求めると、子どもは「わかってもらえない」という感覚を持ち、信頼関係が揺らぎます。
しかし同時に、嫌なことがあれば常に回避できるという学習が定着してしまうと、将来的に困難に向き合う力が育ちにくくなる可能性もあります。
ここに慎重な判断が求められます。
学校に行かないという選択肢を完全に閉ざす必要はありませんが、それを常に即時的な解決策にしないことが大切です。
例えば、「今日はどうしてもつらいなら休んでもいいよ。
ただ、その代わり午後に先生に連絡してみようか」「今日は遅れて行くという方法もあるよ」といった段階的な選択肢を提示することが有効です。
休むか登校かではなく、時間を短縮する、教室以外の場所から始めるなど、柔軟な中間案を探ることで、回避と挑戦のバランスを取ることができます。
また、嫌なことの内容を具体化することも重要です。
「嫌だ」という漠然とした感情を、「朝の準備が苦手なのか」「特定の教科が不安なのか」「友達関係が心配なのか」と分解していくことで、対処可能な課題に変えていきます。
小さな成功体験を積み重ねることが、回避傾向を弱める鍵になります。
さらに、親自身の態度が子どもの行動を左右します。
強い不安や怒りをぶつけると、子どもは防衛的になります。
逆に過度に甘やかすと、自信を育てる機会を失うことがあります。
落ち着いた態度で、「嫌でも大丈夫。乗り越える力はあるよ」というメッセージを送り続けることが大切です。
結論として、学校に行かないという選択肢は絶対に否定すべきものではありませんが、それを常に最初の解決策にしないことが重要です。
子どもの安心を守りながら、少しずつ困難に向き合う経験を支える姿勢こそが、長期的な自立につながるのです。
発達障害ラボ
車 重徳