「体調が悪い」と言って学校を休んだ子どもが家でずっとゲームをしているうちに、結果として全く学校に行かなくなってしまったという状況は、多くの保護者にとって強い不安と葛藤を生みます。
そして「このままで本当に良いのか」という問いは、自然で当然の感情です。
結論から言えば、その状態を無条件に肯定することは慎重であるべきですが、同時に単純な強制や叱責で解決する問題でもありません。
重要なのは、なぜその流れが固定化したのかを理解することです。
最初の「体調が悪い」という訴えが、身体症状を伴う強い心理的ストレスであった可能性は否定できません。
学校という環境に対して強い不安や疲労を感じている場合、ゲームは安全でコントロール可能な世界として機能します。
ゲームは努力に対する即時報酬があり、評価される不安も少ないため、安心感を与えます。
しかし、その安心感が長時間・長期間続くと、脳はより刺激の強い環境を優先するようになります。
その結果、学校のように負荷の高い環境へ戻るハードルがさらに上がってしまうのです。
ここで問題なのは「休んだこと」そのものよりも、「休む=ゲームができる」という学習が強化された可能性です。
人間は報酬によって行動が固定化されやすい生き物です。
もし休むたびにゲーム時間が増えるという構造があれば、回避行動は自然に強化されます。
この状態を放置すると、生活リズムの乱れ、社会的接触の減少、自己効力感の低下が進み、再登校の心理的負担はますます大きくなります。]
しかし、だからといって急激にゲームを取り上げ、強制的に登校させることは逆効果になりやすいです。
急な制限は強い反発や家庭内対立を生み、信頼関係を損なう危険があります。
必要なのは段階的な立て直しです。
まず生活リズムを整えること、ゲーム時間を少しずつ調整すること、学校以外の外出機会を増やすことなど、小さな社会的接点を回復させることが重要です。
そして学校復帰も、いきなり通常登校を目指すのではなく、短時間登校や別室登校など柔軟な方法を探ります。
この状況を「良いか悪いか」で判断するよりも、「このまま固定化すると何が起こるか」を冷静に考えることが大切です。
子どもは怠けているのではなく、楽な環境に留まろうとする自然な反応を示しているだけかもしれません。
その反応を責めるのではなく、回避が習慣化しないように環境を整え直すことが親の役割です。
安心を守りながら、少しずつ外の世界へ戻る橋を架けていく姿勢こそが、この状況を乗り越えるために必要なのです。
発達障害ラボ
車 重徳