WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査の視空間指標、いわゆるVSIが低い子どもを育てる際に大切なのは、「不器用」「センスがない」と決めつけないことです。
VSIは図形の構成力や空間の把握、形の違いを見分ける力などを測る指標であり、日常生活では図工や算数の図形問題、板書の写し取り、地図の理解、身の回りの整理整頓などに関わります。
この指標が低い場合、見たものを正確に再現することや、全体のバランスを捉えることが苦手な傾向がありますが、それは努力不足ではなく、情報処理の特性です。
育て方の基本は、「見て覚える」ことを前提にしすぎないことです。
黒板の内容をそのままノートに写す作業が負担になりやすいため、写真で記録する、プリントを活用するなどの工夫が役立ちます。
また、図形問題では「頭の中で回転させて考える」ことが難しいため、実際に紙を回してみる、立体模型を触って確かめるなど、具体物を使った学習が効果的です。
抽象的な説明だけでは理解が進みにくいことを周囲が理解しておく必要があります。
生活面では、空間認知の弱さが整理整頓の苦手さとして現れることもあります。
片づけができないからといって叱責するのではなく、物の置き場所を固定し、ラベルや写真で視覚的に示すなど、環境を整えることが重要です。
視空間処理が苦手な子どもほど、「見て分かる」環境が助けになります。
さらに、自信を守る視点も欠かせません。
図工が苦手、絵がうまく描けないといった経験が続くと、「自分はセンスがない」と思い込みやすくなります。
しかし、VSIが低くても、言語理解や記憶力、対人感覚など他の領域が強みであることも多くあります。
その強みを評価し、成功体験を積ませることが、全体的な自己肯定感を支えます。
また、時間的な余裕を与えることも大切です。空間処理には時間がかかる場合があるため、急がせると混乱が増します。
「ゆっくりでいいよ」と伝えるだけで、心理的な負担は軽減されます。
視空間の弱さは一生変わらないものではなく、経験や支援によって補いやすくなります。
大切なのは、その子の特性を理解し、努力不足と誤解せず、具体的な工夫で支える姿勢です。
環境を調整し、強みを活かしながら育てていくことが、VSIが低い子どもにとって最も現実的で温かい関わり方なのです。
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発達障害ラボ
車 重徳