WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査を受けたあと、多くの保護者が悩むのが「この結果を子ども本人に伝えるべきか」という問題です。
IQの数値や指標の凸凹をそのまま話してよいのか、それとも伝えない方がよいのか。
これは非常に繊細で、簡単に白黒つけられる問題ではありません。
専門家の立場から言えば、答えは「どう伝えるか」によって変わります。
まず前提として、WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査の結果は「能力の順位表」ではありません。
子どもの得意と苦手の傾向を示す地図です。
しかし数値だけをそのまま伝えると、「自分は頭が悪いのか」「○○が低いからダメなんだ」と誤解する危険があります。
特に自己肯定感が下がっている子どもにとって、数値は強いラベルになりかねません。
ですから、単純にIQの高さや低さを伝えることは慎重であるべきです。
一方で、何も伝えないことが必ずしも最善とは限りません。
子ども自身が「どうして自分はみんなと同じようにできないのだろう」と悩んでいる場合、特性を説明することは安心材料になります。
例えば、「あなたは考える力は強いけれど、作業のスピードはゆっくりなんだよ」といった形で、強みと弱みをセットで伝えることは有効です。
大切なのは、「だからダメ」ではなく、「だから工夫すれば大丈夫」というメッセージを添えることです。
専門家の本音としては、数値よりも物語として伝えることを勧めます。
「あなたは言葉で考えるのが得意」「一度にたくさん覚えるのは疲れやすい」といった具体的で前向きな表現に置き換えることで、自己理解が深まります。
結果は固定された能力ではなく、成長途中の特性だという視点も重要です。
また、年齢や理解力によって伝え方は変わります。
小学生と中学生では受け止め方が異なります。
子どもが質問してきたタイミングを大切にし、一方的に説明しないこともポイントです。
WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査の結果は、子どもを評価するためではなく、支援の方向を見つけるための材料です。
伝えるかどうかではなく、「その子の自己肯定感を守りながらどう共有するか」が本質です。
数値に縛られず、その子の可能性を広げる言葉に変換できるかどうか。
それが専門家として最も大切にしている視点です。
発達障害ラボ
車 重徳