WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査を受けて「全検査IQは平均範囲です」と説明されたとき、多くの保護者はひとまず安心します。
しかしその一方で、「平均と言われたのに、なぜこんなに困っているのだろう」と戸惑うケースも少なくありません。
実は、平均IQであっても困りごとが生じることは珍しくありません。
その理由は、IQという一つの数字だけでは子どもの特性を十分に説明できないからです。
WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査は全検査IQだけでなく、言語理解、視空間、流動性推理、ワーキングメモリ、処理速度という五つの主要指標を示します。
全体の平均値が100前後であっても、指標間に大きな差がある場合、日常生活や学校場面でアンバランスが生じます。
例えば言語理解が高く処理速度が低い場合、頭の中では理解していても作業が追いつきません。
ワーキングメモリが弱ければ、先生の指示を覚えきれずに叱られることが増えます。
この「できるはずなのにできない」というズレこそが、困り感の正体です。
また、平均IQという言葉が安心材料になり過ぎることも問題です。
周囲から「問題ない」「頑張ればできる」と見なされ、具体的な支援が受けられないことがあります。
その結果、本人は努力しているのに成果が出ず、自己肯定感が低下します。
平均という数値は、支援が不要という意味ではありません。
さらに、IQはあくまで認知の一側面です。
不安の強さ、感覚過敏、対人スキル、実行機能などは別の要素として影響します。
平均IQでも、環境とのミスマッチがあれば生きづらさは十分に起こります。
特に指標間のディスクレパンシーが大きい場合は、場面によってパフォーマンスが大きく変わるため、評価が安定しにくくなります。
WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査の結果を見る際に大切なのは、全検査IQだけに目を向けないことです。
その子がどの場面で疲れやすいのか、どの力を使うと楽になるのかを読み取ることが本質です。
平均IQで困っているのは矛盾ではありません。
それは能力不足ではなく、特性のアンバランスや環境とのズレが原因であることが多いのです。
数値に安心するのではなく、その中身を丁寧に理解することが、困り感を減らす第一歩になります。
発達障害ラボ
車 重徳