「どうしてこの子は自分のことしか考えられないのだろう」
きょうだいや友だちとのやりとりの中で、順番を守れない、相手の気持ちに気づかない、自分の要求ばかりを通そうとする姿を見ると、親は不安になります。
しかしまず理解しておきたいのは、子どもの自己中心性は成長過程の一部であり、特性によっては発達に時間がかかることもあるという点です。
幼児期から学童期にかけては、他者視点を持つ力が徐々に育っていきます。
発達特性がある場合、言語理解やワーキングメモリ、実行機能の弱さが影響し、相手の立場を想像することが難しいことがあります。
WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査で言語理解が弱い子は、感情語や抽象的な説明を理解しづらく、処理速度が低い子は、その場で状況を整理する前に行動してしまうことがあります。
つまり「わざと」ではなく、「まだできない」場合が多いのです。
対応で重要なのは、道徳的に叱ることよりも、具体的に教えることです。
「相手の気持ちを考えなさい」と抽象的に伝えても、方法が分からなければ行動は変わりません。
「今、〇〇ちゃんはどんな顔をしていたかな」「自分が同じことをされたらどう思うかな」と具体的な場面で一緒に考える練習が必要です。
絵本やロールプレイも有効です。
また、衝動的に自分の要求を優先してしまう子には、待つ練習や選択肢を提示する方法が効果的です。
「今すぐ」か「あとで」かを選ばせることで、自己コントロールの幅を広げます。
小さな成功体験を積み重ねることが、自信と社会性の土台になります。
「自分のことしか考えない」と決めつけてしまうと、親子関係は硬直します。
性格の問題ではなく、スキルの発達途中と捉えることが大切です。
社会性は自然に備わるものではなく、経験と練習で育つ力です。
焦らず、具体的に、繰り返し教えること。
その積み重ねが、他者を思いやる力へとつながっていきます。
発達障害ラボ
車 重徳