知能検査の結果と「幸せ」は関係あるのか
WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査やWAIS-Ⅳ(ウェイス4)検査などの知能検査を受けた後、多くの人が気になることがあります。
それは、「IQが高ければ幸せになれるのか」という疑問です。
子どもの検査結果を見た保護者の中には、「平均より高くて安心しました」と話す方がいます。
逆に、「思ったより低かったので将来が心配です」と落ち込む方もいます。
また、大人になってWAIS-Ⅳ(ウェイス4)検査を受けた人の中には、自分のIQを知ったことで安心する人もいれば、ショックを受ける人もいます。
しかし、長年にわたって発達支援や心理支援の現場に関わってきた立場からお伝えしたいことがあります。
それは、「知能検査の結果と幸せは、必ずしも一致しない」ということです。
もちろん、知的能力は人生において大切な要素の一つです。
学習を理解しやすかったり、問題解決が得意だったりすることで、学校や仕事で有利になる場面は確かにあります。
しかし、実際に人生の満足度や幸福感を決める要因は、それだけではありません。
例えば、WAIS-Ⅳ(ウェイス4)検査で非常に高いIQを持つ人の中にも、人間関係で悩み続けている人がいます。
仕事で成果を出していても、自分を責め続けている人もいます。
反対に、知能検査では平均的な結果であっても、家族や友人との関係に恵まれ、毎日を穏やかに過ごしている人もいます。
つまり、人の幸せはIQだけでは決まらないのです。
実際に相談現場で出会う方々を見ていると、生きやすさに大きく影響するのは「自己理解」と「環境との相性」であることが分かります。
例えば、処理速度が低い人がスピード重視の職場で働けば苦しくなります。
しかし、丁寧さや正確さが評価される環境であれば、その人は力を発揮できます。
また、言語理解が高い人が知的な会話を楽しめる仲間に囲まれれば、自分らしく生きることができます。
同じ能力を持っていても、環境が変われば幸福度は大きく変わるのです。
さらに、人間の幸福感には自己肯定感も深く関係しています。
知能検査の結果が高くても、「もっと頑張らなければ」「失敗してはいけない」と自分を追い込み続ければ苦しくなります。
逆に、結果が平均的であっても、「自分には自分の良さがある」と思える人は、人生の満足度が高くなる傾向があります。
知能検査の本当の目的は、優劣を決めることではありません。
自分自身の特徴を理解し、自分に合った環境や方法を見つけるためのものです。
IQが高いから幸せになれるわけではありません。
IQが低いから不幸になるわけでもありません。
本当に大切なのは、自分の得意なことと苦手なことを理解し、自分らしく生きられる場所を見つけることです。
知能検査の結果は人生の通知表ではありません。
それは、自分自身を理解するための地図です。
そして幸せとは、その地図を使って誰かと競争することではなく、自分だけの道を見つけて歩いていくことなのです。
発達障害ラボ
車 重徳