「夢」を追い続ける人は本当に「幸せ」なのか
子どもの頃から私たちは、「夢を持ちなさい」「夢を諦めてはいけない」と教えられてきました。
学校でも、テレビでも、本でも、「夢を叶えた人」は成功者として紹介されます。
そのため、多くの人が無意識のうちに「夢を追い続けること=幸せな人生」と考えるようになります。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
私は発達障害支援や心理支援の現場で、多くの子どもや大人と出会ってきました。
その中で感じることがあります。
それは、「夢を持つこと」と「幸せになること」は、必ずしも同じではないということです。
もちろん、夢を持つこと自体は素晴らしいことです。
夢があることで人は努力できますし、困難を乗り越える力も生まれます。
実際に大きな夢を叶えた人たちの人生には、感動するような物語があります。
しかし一方で、「夢を叶えなければ幸せになれない」と考え始めた瞬間から、人は苦しくなることがあります。
例えば、プロ野球選手になりたい子どもがいたとします。
夢に向かって努力することは素晴らしいことです。
しかし、もし怪我をしたり、能力の限界が見えたりしたとき、「夢を叶えられない自分には価値がない」と考えてしまったらどうでしょうか。
それは夢ではなく、自分を苦しめる呪いになってしまいます。
実は大人になってからも同じことが起こります。
起業したい。
有名になりたい。
本を出版したい。
年収1000万円を超えたい。
こうした夢を持つことは悪いことではありません。
しかし、その夢だけが人生の価値になってしまうと、達成するまで幸せを感じられなくなります。
そして皮肉なことに、夢を叶えた人の中にも苦しみ続ける人がいます。
なぜなら、人間は目標を達成すると、それが当たり前になってしまうからです。
年収1000万円を目指していた人は、達成すると今度は2000万円を目指します。
有名になりたかった人は、もっと有名になろうとします。
つまり、「夢の達成」と「幸せ」は別のものなのです。
WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査やWAIS-Ⅳ(ウェイス4)検査の相談でも似たようなことがあります。
高いIQを目指す保護者。
偏差値の高い学校を目指す子ども。
良い会社への就職を目指す大人。
しかし、実際には目標を達成しても幸せになれない人がたくさんいます。
反対に、特別な夢を持たなくても、自分らしく生きている人はたくさんいます。
家族と笑って食事ができる。
好きな仕事ができる。
気の合う友人がいる。
安心して眠れる場所がある。
こうした日常の中に幸せを感じている人も少なくありません。
本当に大切なのは、「夢を持つこと」ではなく、「夢に支配されないこと」なのかもしれません。
夢は人生を豊かにする道具です。
しかし、人生そのものではありません。
夢を追い続けることが幸せなのではなく、夢があってもなくても、自分を大切にしながら生きられることが幸せなのです。
夢を叶えたから幸せになるのではありません。
幸せを感じられる人が、夢にも挑戦できるのです。
だからこそ、夢を追いかけることも大切ですが、その途中にある今日の幸せを見失わないことの方が、もっと大切なのではないでしょうか。
発達障害ラボ
車 重徳