勉強は「辛くて苦しいもの」という価値観を子どもに与える保護者の末路
「勉強なんて面白くないものだよ」
「大人になったらもっと大変なんだから頑張りなさい」
「みんな我慢して勉強しているんだから」
私たち大人は、悪気なくこのような言葉を子どもに伝えてしまうことがあります。
しかし、その言葉が長年積み重なったとき、子どもの中にある一つの価値観が形成されていきます。
それが、「勉強とは辛くて苦しいものだ」という価値観です。
もちろん、勉強には努力が必要です。
九九を覚えることも、漢字を覚えることも、受験勉強をすることも簡単ではありません。
しかし、本来の学びとは「できなかったことができるようになる喜び」や「知らなかったことを知る楽しさ」の中に存在するものです。
ところが、大人自身が勉強を苦行として捉えていると、その価値観は自然と子どもへ受け継がれていきます。
そして最初に失われるのは、「知りたい」という好奇心です。
幼い子どもは本来、とても学習意欲の高い存在です。
「なんで空は青いの?」
「どうして雨が降るの?」
「これは何?」
毎日のように質問を繰り返します。
しかし、「勉強は辛いもの」「やらされるもの」という価値観の中で育つと、学ぶことは楽しみではなく義務になります。
義務になった瞬間、人は自ら学ばなくなります。
発達障害のある子どもでも同じです。
WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査を実施していると、言語理解が高い子、流動性推理が高い子、特定の分野に強い興味を持つ子に出会います。
本来であれば、その知的好奇心こそが最大の武器になるはずです。
しかし、「勉強は苦しいものだ」というメッセージを受け続けると、せっかくの強みが発揮されなくなってしまいます。
さらに深刻なのは、大人になってからの影響です。
勉強を「苦行」として育った子どもは、多くの場合、「学ぶこと」を避けるようになります。
新しい仕事を覚えること。
資格取得に挑戦すること。
本を読むこと。
これらすべてに対して、「面倒」「辛い」「やりたくない」という感情が先に立つようになります。
一方で、学ぶことを楽しめる人は年齢に関係なく成長し続けます。
仕事の知識を学ぶ。
趣味を深める。
新しい技術を身につける。
学びが人生の楽しみになるのです。
実は現代社会において最も重要な能力の一つは、「学び続ける力」です。
AIが発達し、仕事が変化し続ける時代だからこそ、知識を吸収し続ける人が強くなります。
しかし、子どもの頃から「勉強は辛いもの」と教えられてきた人は、その大切な力を失いやすくなります。
もちろん、努力は必要です。
時には苦しい勉強もあるでしょう。
しかし、本当に子どもに伝えるべきことは、「勉強は辛いものだから頑張れ」ではありません。
「学ぶことで世界が広がる」
「できることが増えると人生が楽しくなる」
「知らなかったことを知るのは面白い」
という感覚です。
保護者が子どもに与える最大の教育は、勉強を教えることではありません。
学ぶことを好きになる価値観を育てることです。
勉強を苦行にするのも、人生を豊かにする道具にするのも、大人が子どもにどのようなメッセージを伝えるかにかかっているのです。
発達障害ラボ
車 重徳