「努力」を忘れてしまった子どもの末路
近年、
「無理をさせてはいけない」
「子どもの気持ちを尊重しよう」
という考え方が広く浸透してきました。
もちろん、子どもの心を守ることはとても大切です。
発達障害のある子どもや不登校の子どもを支援していると、過度なプレッシャーが子どもを追い詰めてしまう場面も数多く見てきました。
しかし、その一方で気になることがあります。
それは、「努力する経験」そのものを失ってしまう子どもが増えていることです。
ここでいう努力とは、根性論ではありません。
苦しくても我慢しろという話でもありません。
自分なりの目標に向かって少しずつ前進する経験のことです。
人は生まれたときから努力できるわけではありません。
靴ひもを結べるようになることも、自転車に乗れるようになることも、九九を覚えることも、最初はうまくいきません。
何度も失敗しながら少しずつできるようになります。
その過程で、「頑張ったらできるようになる」という感覚を身につけていきます。
これを心理学では自己効力感と呼びます。
実は、この感覚こそが人生を支える大切な土台になります。
ところが、失敗を避け続けたり、少しでも嫌なことがあるとやめたりする経験ばかりが続くと、「自分は努力によって変われる」という感覚が育ちにくくなります。
すると、難しい課題に出会ったときに挑戦する前から諦めるようになります。
勉強もそうです。
人間関係もそうです。
仕事もそうです。
人生には思い通りにならないことがたくさんあります。
そのたびに「無理」「できない」「やりたくない」となってしまうと、自分の可能性を広げる機会を失ってしまいます。
WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査を実施していると、「能力はあるのに自信がない子ども」に出会うことがあります。
言語理解も高い。
流動性推理も高い。
それなのに新しいことに挑戦できない。
その背景をたどると、過去に努力して成功した経験が少ない場合があります。
逆に、知能検査の結果が平均的であっても、努力する習慣を身につけている子どもは大きく成長していきます。
なぜなら、人生で求められるのは能力だけではないからです。
能力はスタート地点です。
しかし、その能力を活かすのは行動です。
そして行動を支えるのが努力する力なのです。
もちろん、努力には方向性が必要です。
発達障害のある子どもに対して、苦手なことを延々と頑張らせることは適切ではありません。
大切なのは、その子に合った方法で成功体験を積み重ねることです。
小さな一歩で構いません。
昨日より少しできるようになった。
前回より少し頑張れた。
その積み重ねが努力する力を育てます。
「努力」を忘れてしまった子どもの末路とは、成績が悪くなることではありません。
夢を失うことでもありません。
本当に怖いのは、「自分には人生を変える力がある」という感覚を失ってしまうことです。
だからこそ私たち大人は、結果だけを評価するのではなく、挑戦したことや続けたことを認める必要があります。
努力とは才能のある人だけのものではありません。
誰もが少しずつ育てていく力なのです。
そしてその力こそが、子どもが将来、自分らしい人生を切り開いていくための大切な武器になるのではないでしょうか。
発達障害ラボ
車 重徳