WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査の検査者に向かない人とは
WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査は、子どもの認知特性を客観的に把握し、一人ひとりに合った支援や教育へとつなげるための知能検査です。
近年は発達障害への理解が進んだこともあり、
「WISC-Ⅴを実施できるようになりたい」
と考える公認心理師や臨床心理士、教育・福祉関係者も増えています。
しかし、WISC-Ⅴ検査は検査技術だけを身につければ実施できるものではありません。
検査者としての考え方や姿勢が非常に重要であり、それによって検査の質は大きく変わります。
では、どのような人がWISC-Ⅴ検査の検査者に向いていないのでしょうか。
まず挙げられるのは、
「IQだけで子どもを判断してしまう人」
です。
WISC-Ⅴでは全検査IQや各指標の得点が算出されますが、その数値は子どもの価値を示すものではありません。
IQが高いから優秀、低いから能力がないという考え方では、この検査の本来の目的を見失ってしまいます。
検査結果はあくまでも認知特性を理解するための手がかりであり、支援を考えるための材料です。
数値だけを見て結論を出してしまう人は、検査者として適切とは言えません。
次に、
「マニュアルだけを見て検査をする人」
も注意が必要です。
WISC-Ⅴには厳密な実施方法がありますが、目の前にいるのは機械ではなく、一人の子どもです。
緊張している子もいれば、初対面が苦手な子、不安が強い子もいます。
安心できる雰囲気をつくり、その子が本来の力を発揮できる環境を整えることも検査者の重要な役割です。
マニュアルどおりに進めることだけを優先してしまうと、子どもの表情や反応、気持ちに目を向けられなくなってしまいます。
また、
「結果を伝えることが目的になっている人」
も検査者には向いていません。
保護者が本当に知りたいのは、
「IQがいくつだったか」
ではありません。
「この子にはどのような支援が必要なのか」
「家庭ではどのように関わればよいのか」
という具体的な道筋です。
検査結果を読み上げるだけで終わる説明では、保護者の不安は解消されません。
検査結果を未来につながるアドバイスへ変えられることが、検査者には求められます。
さらに、
「自分の考えが絶対に正しい」
と思っている人も注意が必要です。
子どもの発達は非常に多様であり、一つの検査だけで全てを理解できるわけではありません。
家庭での様子、保育園や学校での様子、医師や支援者からの情報など、多くの視点を統合して初めて、その子の全体像が見えてきます。
検査結果だけで断定的な判断をしたり、他職種の意見に耳を傾けなかったりする姿勢では、適切な支援にはつながりません。
そして最も検査者に向かないのは、
「子どもへの興味や敬意を持てない人」
です。
WISC-Ⅴ検査は、人を評価するための作業ではありません。
一人の子どもの可能性を探し、その子らしい学び方や生活の仕方を見つけるための支援です。
目の前の子どもを
「検査対象」
としか見られないのであれば、本当に価値のあるアセスメントはできません。
優れた検査者とは、検査技術が高い人だけを指すのではありません。
子どもの小さな変化に気づき、保護者の不安に寄り添い、数値の背景にある物語を読み取り、その子の未来に希望を示せる人です。
WISC-Ⅴ検査の検査者に向いているかどうかは、知識や経験だけでは決まりません。
「この子の力を少しでも引き出したい」
という温かいまなざしを持ち続けられるかどうかこそが、最も大切な資質なのです。
発達障害ラボ
車 重徳