放課後等デイサービスでWISC-Ⅴ(ウィスク5)検査を実施したほうが良い明確な理由とは何か
近年、放課後等デイサービスを利用する子どもたちの中には、発達障害や学習面の困難さ、学校生活への適応の難しさを抱えている子どもが数多くいます。
そのような子どもたちに対して、より質の高い療育を提供するためには、一人ひとりの認知特性を正確に把握することが欠かせません。
そのための有効な手段の一つが、WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査です。
WISC-Ⅴは
「IQを測る検査」
と紹介されることが多いですが、本来の目的はIQを知ることではありません。
その子がどのように考え、どのような情報処理を得意とし、どこで困りやすいのかを客観的に把握し、支援へ結び付けるための検査です。
この視点は、放課後等デイサービスで個別支援計画を作成し、療育を行ううえで非常に大きな意味を持ちます。
例えば、学校で
「集中力がない」
と言われている子どもでも、WISC-Ⅴを実施するとワーキングメモリの弱さや処理速度の低さが背景にあることがあります。
その場合、
「集中しなさい」
と繰り返し伝える支援ではなく、情報量を減らしたり、視覚的な手がかりを増やしたりする支援の方が効果的です。
このように、困った行動だけを見るのではなく、その背景にある認知特性を理解できることが、WISC-Ⅴを実施する大きな価値と言えるでしょう。
また、放課後等デイサービスでは、集団療育と個別療育を組み合わせる事業所が増えています。
しかし、同じプログラムでも子どもによって効果は異なります。
言語理解が得意な子どもには言葉による説明が効果的ですが、視空間認知が得意な子どもにはイラストや図を使った方が理解しやすい場合があります。
WISC-Ⅴの結果を活用することで、
「一人ひとりに合った療育」
をより具体的に設計できるようになります。
さらに、保護者支援という点でも大きなメリットがあります。
多くの保護者は、
「なぜうちの子だけ勉強が苦手なのか」
「どうして同じことを何度も忘れるのか」
と悩んでいます。
WISC-Ⅴの結果をもとに認知特性を分かりやすく説明することで、保護者は子どもを責めるのではなく、
「特性に合った関わり方」
を考えられるようになります。
これは家庭での支援の質を高めるだけでなく、親子関係の改善にもつながります。
また、学校との連携にも役立ちます。
放課後等デイサービスは学校と情報共有を行う機会が多くありますが、
「落ち着きがありません」
「指示が入りにくいです」
といった抽象的な情報だけでは、具体的な支援にはつながりにくいことがあります。
一方で、WISC-Ⅴの結果を踏まえ、
「ワーキングメモリの負荷が高い場面で困りやすい」
「処理速度の影響で時間内に課題が終わりにくい」
といった認知特性を共有できれば、学校でも合理的配慮を検討しやすくなります。
ただし、WISC-Ⅴを実施すること自体が目的になってはいけません。
検査結果を個別支援計画へ反映し、療育内容を見直し、保護者や学校と共有して初めて、検査の価値が生まれます。
数値だけを説明して終わるのであれば、WISC-Ⅴを実施する意味は半減してしまいます。
放課後等デイサービスの役割は、子どもの
「できないこと」
を指摘することではなく、
「できること」
を増やし、
「自分らしく生きる力」
を育てることです。
そのためには、一人ひとりの認知特性を正しく理解することが欠かせません。
WISC-Ⅴは、その子の可能性を見つけ、より効果的な療育を実現するための重要なアセスメントツールです。
だからこそ、適切な知識と技術を持った専門職がWISC-Ⅴを活用することは、放課後等デイサービスの支援の質を高め、子どもたちの未来をより豊かなものにする大きな力となるのです。
発達障害ラボ
車 重徳