放課後等デイサービスでWISC-Ⅴ(ウィスク5)検査を導入する際、まず最初におこなうこととは何か
近年、放課後等デイサービスにおいて、WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査を導入したいと考える事業所が増えています。
子どもの認知特性を客観的に把握し、その子に合った個別支援計画や療育プログラムを作成するために、WISC-Ⅴは非常に有効なアセスメントツールだからです。
しかし、
「検査を導入したい」
と思ったとき、多くの事業所は最初に検査器具を購入したり、研修を探したりしようとします。
もちろん、それらも必要ですが、本当に最初に行うべきことは別にあります。
それは、
「なぜ自分たちの事業所でWISC-Ⅴを実施するのか」
という目的を明確にすることです。
実は、この目的が曖昧なまま導入すると、WISC-Ⅴは単なる
「IQを測る検査」
になってしまいます。
しかし、本来のWISC-ⅤはIQを知るための検査ではありません。
一人ひとりの子どもの認知特性を理解し、より効果的な支援へ結び付けるための検査です。
つまり、検査を実施することが目的ではなく、
「支援の質を高めること」
が目的でなければなりません。
例えば、
「利用児童の個別支援計画をより具体的にしたい」
「療育プログラムを認知特性に合わせて組み立てたい」
「学校や家庭との連携を強化したい」
といった明確な目的があれば、検査結果の活用方法も自然と見えてきます。
反対に、
「他の事業所も導入しているから」
「利用者募集のため」
といった理由だけでは、本来の価値を十分に発揮することは難しいでしょう。
次に考えるべきなのは、
「検査結果を誰がどのように活用するのか」
という体制づくりです。WISC-Ⅴは検査を実施して終わりではありません。
結果を読み取り、個別支援計画へ反映し、日々の療育に活かし、保護者や学校へ分かりやすく説明して初めて意味があります。
そのため、検査者だけでなく、児童発達支援管理責任者、児童指導員、保育士など、事業所全体で結果を共有し、支援へつなげる仕組みを作ることが重要です。
また、検査を担当する専門職の育成も欠かせません。
WISC-Ⅴは標準化された心理検査であり、正確な実施方法と採点、適切な結果の解釈が求められます。
研修を受講することはもちろんですが、それ以上に経験豊富な検査者からスーパービジョンを受け、実践を通して学び続ける姿勢が大切です。
検査技術だけでなく、発達心理学、特別支援教育、神経発達症、療育など幅広い知識を身につけることで、より質の高いアセスメントが可能になります。
さらに忘れてはならないのが、保護者への説明体制です。
検査結果を数字だけで説明しても、保護者の不安が大きくなるだけの場合があります。
「この子にはどのような強みがあり、どのような関わり方が効果的なのか」
を具体的に伝え、家庭でも実践できる支援方法を提案することが、放課後等デイサービスの大きな役割です。
検査は保護者を安心させ、子どもの可能性を一緒に考えるためのものでもあります。
そして最も大切なのは、
「検査によって子どもを評価しない」
という理念を事業所全体で共有することです。
WISC-Ⅴの目的は、子どもを優劣で比べることではありません。
その子だけの学び方や理解の仕方を知り、最も力を発揮できる支援方法を見つけることです。
放課後等デイサービスでWISC-Ⅴを導入する際、最初に行うべきことは、検査器具を購入することでも、研修を受けることでもありません。
「この検査を通して、子どもたちの未来をより豊かにしたい」
という事業所全体の目的を明確にすることです。
その理念があるからこそ、WISC-Ⅴは単なる心理検査ではなく、一人ひとりの可能性を引き出すための大切な支援ツールとして、本当の価値を発揮するのです。
発達障害ラボ
車 重徳