就労移行支援事業所こそ、WAIS-Ⅳ(ウェイス4)検査を実施して、利用者の就労に結び付けるべき
就労移行支援事業所の最大の目的は、利用者が自分らしく働き続けられる職場へ就職し、その後も安定して職業生活を送れるよう支援することです。しかし現実には、「就職はできたものの長続きしない」「何度も転職を繰り返してしまう」「自分に合わない仕事を選んでしまう」といったケースが少なくありません。その背景には、本人の能力不足ではなく、自分自身の認知特性を十分に理解できていないことが大きく関係している場合があります。だからこそ、就労移行支援事業所ではWAIS-Ⅳ(ウェイス4)検査を積極的に活用するべきだと考えます。
WAIS-Ⅳは成人を対象とした知能検査であり、単にIQを測定するための検査ではありません。言語理解、知覚推理、ワーキングメモリ、処理速度という四つの認知機能を詳しく分析し、「どのような仕事が得意なのか」「どのような場面で困りやすいのか」を客観的に把握することができます。この情報は、就職活動を進めるうえで非常に大きな意味を持ちます。
例えば、処理速度が低い利用者の場合、時間に追われる作業や大量の事務処理では力を発揮しにくい可能性があります。しかし一方で、丁寧さや正確性が求められる仕事では高い能力を発揮できることがあります。また、言語理解が高い利用者であれば、説明や相談業務、接客などで強みを生かせる可能性があります。このように、WAIS-Ⅳは「できないこと」を探すためではなく、「活躍できる環境」を見つけるための検査なのです。
さらに、就労後の職場定着支援にも大きな効果があります。就職後に「仕事が続かない」と相談を受ける利用者の中には、自分の認知特性に合わない仕事を選んでいたり、合理的配慮を受けられていなかったりするケースがあります。WAIS-Ⅳの結果をもとに、「複数の指示はメモがあると理解しやすい」「作業手順を視覚化すると能力を発揮しやすい」「急な予定変更が苦手である」といった特徴を整理できれば、企業側も具体的な配慮を行いやすくなります。その結果、利用者が安心して働き続けられる環境づくりにつながります。
また、利用者本人の自己理解が深まることも大きなメリットです。「なぜ同じミスを繰り返すのだろう」「どうして周囲と同じように仕事が進まないのだろう」と自分を責め続けていた方が、認知特性を知ることで、「能力がないのではなく、自分の特性に合ったやり方が必要だった」と理解できるようになることがあります。この自己理解は、自信を取り戻し、自分に合った働き方を考える大きなきっかけになります。
もちろん、WAIS-Ⅳを実施すれば就職が保証されるわけではありません。検査だけで利用者の適性を判断することも適切ではありません。実際の職業評価、職場実習、日々の訓練状況、本人の希望や価値観など、多面的な情報と合わせて活用することが重要です。WAIS-Ⅳはあくまでも支援の方向性を示す重要なアセスメントツールであり、支援そのものではありません。
これからの就労移行支援に求められるのは、「就職させること」ではなく、「長く働き続けられる支援」を行うことです。そのためには、利用者一人ひとりの認知特性を正しく理解し、その人に合った職業選択や職場環境を提案することが欠かせません。WAIS-Ⅳは、そのための非常に有効な手段です。就労移行支援事業所こそ、WAIS-Ⅳを積極的に活用し、利用者の「働ける仕事」を探すのではなく、「その人らしく活躍できる仕事」を一緒に見つけていく支援を行うことが、これからますます重要になっていくのではないでしょうか。